不純異性交際(下) ―それぞれの未来―
第21章 二度目の学校訪問
私たちは急いで身なりを整え、廊下に出た。
「あっ、瀬川先生ここにいた。次、体育なんでご用聞きに来ました」
そこには体育係らしき男女の生徒がいて、瀬川くんが用意しておくものなどを伝えると早足で戻っていった。
時折、ふざけあっている2人の後ろ姿を見送るとなんだか懐かしさが込み上げてくる。
「私たちも、仲良しだったよね」
「今も、だろ(笑)」
彼が私の背中をポンと叩き、私たちは応接室に向かった。
瀬川くんは2限目の体育のため別れ、私は校長先生たちと打ち合わせを始めた。
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2時間ほどで大方の方針が定まり、「まぁ、少しお茶にしましょう」と教頭先生が温かい緑茶とお茶菓子を運んできてくれた。
「っ…!このお茶、すごく美味しいですね」
「あら、そーお?これね、この地元でとれたお茶なのよぉ。私も大好き。ミライさん、お目が高いっ!」
少しのあいだ談笑していると、ふと思い立ったように校長先生が話題を変えた。
「いやねぇ、瀬川先生も大変でしたな。ここに赴任してきた当初は…色々ありましたからねぇ」
話が見えず私は黙って様子を見ていると、教頭先生も同意した。
「そうですねぇ、本当。こう言っちゃ悪いですけど…今はとっても生き生きしてらっしゃるもの。ミライさんのおかげかしら(笑)」
なにかを知ってか知らずか、そんなことを言われる。
「あの…大変だった、っていうのは…」
私が首をかしげて問うと、校長先生はハッと気まずそうにする。
「おっと、これは失礼。瀬川先生、春に…その…ね」
「離婚、ですか?」
「あぁ、ご存知で良かった、まずい事を言ってしまったかと思いました、ははは…」
「私たちね、心配していたんです。瀬川先生はこの学校のこれからを担う、貴重な若い人材ですし…。まさか赴任してきてくれるなんて夢みたいな話でしたものねぇ、校長?」
「えぇ、そのとおりです。しかし赴任されてから1年くらいは、大変そうでね…」
「私たちも、家庭の事情に首を突っ込むつもりはなかったんですよ。でもねぇ…、よく電話が、ね。見ているこっちが辛かったですよ」
2人が話す内容からして、以前奈美が言っていたとおりの事が実際に起こっていたのだと理解できた。