不純異性交際(下) ―それぞれの未来―
第22章 嘘
翌朝、私は瀬川くんに”おはよう”と”行ってらっしゃい”のメッセージを送ろうと携帯をひらくと、コウヘイくんからもメッセージが入っていた。
[ミライちゃん、相変わらずツレナイねぇ~?みんなじゃなくても、飯とか行こうよ!]
私はとりあえず瀬川くんにだけいつものように朝のメッセージを送ると、トーストを焼いた。
テレビでは、もうそろそろ梅雨入りだとキャスターが話している。
窓の向こうのどんよりした空を確認し、今日は部屋干しするしかないか…と、私は洗濯機を回した。
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9時半を少し過ぎた頃、玄関のチャイムが鳴った。
「いらっしゃい。大丈夫?」
アンナを迎え入れながら言う。
「うん。ミライ、これ今日一緒に食べよう?カステラ。職場の人にもらったの」
「いいねぇ、おやつにいただこう」
彼女はカーペットに座り、私の部屋の中でも一番気に入っているクッションを抱いた。
「はい。紅茶」
「ありがとう」
「ね、大丈夫だった?ちゃんと寝てるの?クマ出来てる」
「うぅん…あんまり眠れないの」
ズズッと紅茶をすすると、アンナはため息を吐き、黙り込んだ。
隣に座り背中をさすると、しばらくしてようやく言葉を発する。
「あのね………」
「うん?」
「……」
どんどん涙目になっていくアンナの、次の言葉を待つのが辛かった。
「アンナ、…ゆっくりでいいし、泣いてもいいんだからね」
アンナはティーカップを置き、指で目頭の涙をサッと拭った。
「ごめんミライ。ありがとね…」
「大丈夫」
「……彼ね、…女と…会ってたの」
「えっ…?!…2人で?」
「うん」
「えぇえ……浮気してたの?」
「してないって言ってるけど…どうやって信じたらいいの?」
「う、うーん…」
「あの夜、連絡なくて…次の日の朝に、”寝てた”って連絡来たって言ったよね?」
「うん」
「それでそのあと、午前中にうちに来たのね」
「うんうん」
「そしたらすぐ寝ちゃったんだよ。普段そんな事ないのに、すごい熟睡してて…しっかり寝たんじゃないの?って思って」