不純異性交際(下) ―それぞれの未来―
第22章 嘘
「そしたら携帯が鳴ってさ、メッセージ途中まで表示されるじゃん、あれ…」
「そうだね…」
嫌な予感がした。
「朝まで話聞いてくれてありがとう、ってとこまで見ちゃったの。私には朝まで連絡一切しないで…寝てた、って嘘までついて…」
「わお…」
私はもう一度、アンナの背中をさすった。
「それで、彼に言ったのね?」
「うん、起きてから…。嘘ついたのは本当にごめんって。話聞いてただけだけど、誤解されたくなかったからって」
「話って…」
「仕事の愚痴って言ってたけどさ、…付き合ってもいないし、彼女もいるのに、朝まで話聞いてあげるってなんなの?そんなこと…あるかな?」
「うーん…」
私は考えて、慎重に答えた。
「仮にあるとしても、連絡はするかなぁ…私なら」
「そうだよね?………。しかもね、一晩中その子の家にいたんだって。私もう信用できなくてつらいよぉ…」
「うん、辛いよね…。それで結局どうしたの?」
「しばらく会いたくないって、言っちゃった…」
「そっか…」
「ねぇ、どうしたらいいんだろう」
「…アンナがつらい思いしてるのは、私も嫌だな」
「別れたほうがいいのかな…」
「別れたくない?」
「うぅん…分からない…」
長いこと無言の時間が流れた。
「とりあえず…」
やっとアンナが口を開いた頃、時刻は11時を指していた。
「とりあえず、このまま会わずにいてみる。今、冷静に考えられないから…」
「うん。じゃあそうしよう?アンナ、あんまり思い詰めないでね。ちゃんとご飯食べて、ちゃんと寝てよ」
「えへへっ、うん。ありがとう。…別れたら楽になるんだと思う。でも今はまだ、決められないや…」
鼻をすすりながら少しだけ微笑む彼女が痛々しい。
私は彼女を元気づけるために、気持ちを切り替えた。
「ナポリタン作るね!」
「そうだった~!ね、卵焼き敷いたのがいいな」
「はい、仰せのとおりに(笑)」
薄焼き卵を敷いた上にナポリタンを盛り付け、アンナの前に置くと彼女には笑顔が戻っていた。