紅葉色のバイオリン
第1章 希一
「ただいま。」
あるよく晴れた夕方、僕が帰るとリビングから音が聞こえる。
声ではない、楽器だ。
それも電子ピアノでは無い、よく響く弦楽器だ。
リビングをソッと覗くと弟の希一がバイオリンを弾いていた。
珍しい…。
希一は滅多に家でバイオリンを弾かない。
いつも学校に持って行っていることから学校の音楽室で弾いているのだろう。
夕陽が差し込むリビングで赤茶色の紅葉のような色に染まったバイオリンを弾く青年。
まるで絵画のモデルかという塩梅だ。
ふと気配に気付いたのかバイオリンを弾く手を止め、僕の方を見る。
「ああ、お帰り兄さん。ゴメン、気付かなかった。」
「いや、いいよ。僕こそ邪魔して悪かった。続けて。」
「いや、もうそろそろ休憩しようかと思ってたんだ。コーヒー入れるね。」
僕はそう言ってキッチンに向かう希一をどことなく遠い存在に感じてしまった。
あるよく晴れた夕方、僕が帰るとリビングから音が聞こえる。
声ではない、楽器だ。
それも電子ピアノでは無い、よく響く弦楽器だ。
リビングをソッと覗くと弟の希一がバイオリンを弾いていた。
珍しい…。
希一は滅多に家でバイオリンを弾かない。
いつも学校に持って行っていることから学校の音楽室で弾いているのだろう。
夕陽が差し込むリビングで赤茶色の紅葉のような色に染まったバイオリンを弾く青年。
まるで絵画のモデルかという塩梅だ。
ふと気配に気付いたのかバイオリンを弾く手を止め、僕の方を見る。
「ああ、お帰り兄さん。ゴメン、気付かなかった。」
「いや、いいよ。僕こそ邪魔して悪かった。続けて。」
「いや、もうそろそろ休憩しようかと思ってたんだ。コーヒー入れるね。」
僕はそう言ってキッチンに向かう希一をどことなく遠い存在に感じてしまった。