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紅葉色のバイオリン

第1章 希一

翌日…

「え?希一くんが遠い存在に感じた?」

「うん。どうしてそんなことを思ったのか…」

僕は昨日、ふと思ったことを幼馴染みの水沢灰音に話していた。

「なんか…僕の弟じゃないような?ううん、“じゃない”というか“思えない”って言った方が正しいかな?」

灰音は軽くため息を吐く。
それは灰音が何かを察して、呆れた時のサインだ。

「柊一、それは劣等感よ。」

「劣等感?」

僕は心底驚いた。
僕は自分と希一をあまり比べていたつもりは無かったが、心のどこかでは比較していたらしい。
そういえば、母に言われたことがある。

「希一は希一、柊一は柊一なんだから、それで良いのよ。」

確か希一が名門私立校の入試に受かった時に「僕と違って凄いなあ。」と言った時に母が僕に言った言葉だ。
確かに希一はいろいろな才能に恵まれていた。
名門私立校に通い、その中の成績でも中の上、運動はそこそこ出来て、何やらせてもソツ無くこなし、バイオリンとピアノが得意。
顔もそこそこ可愛くて、背も平均はある。
性格は少々、頑固で人の話聞かないが努力家で根は優しい子だ。
勝てる気がしない。

「柊一は柊一よ。柊一には柊一なりの良さがあるでしょ。」

灰音は母親と全く同じことを言う。

「僕の良さか…」

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