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紅葉色のバイオリン

第2章 柊一

「だったら、先に僕がお前らの腕を折ってやるよ!」

僕は3人の前に飛び出すと1番左のやつの顔面目掛けて右ストレートを喰らわせ、勢いそのまま後方から1番右のやつに回し蹴りを脇腹に喰らわせる。
僕の予想外の攻撃に避けれなかった2人はモロに喰らい1人は顔面、1人は脇腹を抑えて疼くまった。

「なっ!」

真ん中の男子は目を丸くしている。

「お前か?希一の背中蹴り上げたのは?」

僕の静かな声と言葉に相手は益々目を丸くする。

「まさか、北条希一の兄?家族がわざわざ…」

「出しゃばるなってか?確かに希一には首突っ込むなって言われてるけどな、見て見ぬふりが出来るほど、僕は人間出来ていないんだ。」

僕はキツく3人を睨む。

「な、何で北条の兄がここに…?」

「希一の兄ならもう少し入るのが難しい大学に行っているとでも思った?お生憎様。僕は希一ほど優秀じゃないものでね。」

僕は真っ直ぐ3人を見据えた。

「希一の腕を折る前にお前らの腕、折ろうか?容赦しないよ?僕は希一ほど優しくは無いんでね。」

「そ、そんなこと言って…」

「『良いか?』ってか?希一を盾にしようとでも思った?それとも大学に僕の暴行を訴えようとした?生憎だけど、希一を盾にしようが、僕の暴行を大学に訴えようがソッチも無事には済まないと思うよ?」

そう言ってスマートフォンを突き出す。
僕にとっては今の会話は全て想定済みの範囲だ。
立場が悪くなったら希一か僕かにマイナスになることを言って脅す。
いじめっ子の常套手段である。
そこで咄嗟にスマートフォンに彼らの会話を録音したのだ。
あの距離で録音出来るかは不安だったが、今日は生徒が少なく、静かなおかげでどうにか上手くいったようだ。

「なっ!」

「黙っていて欲しいなら、もう希一を殴ったりしないことだ。分かったな?」

僕が低い声でそう言うとその迫力にびびったのか3人は散り散りになって逃げ出したのだった。

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