紅葉色のバイオリン
第2章 柊一
希一の殴られた理由については意外なところから知ることになった。
その日、僕は大学にいた。
長期休暇の直前の単位がかかった期末試験の日だった。
その日はどうやら高校生に向けた大学説明会があるらしく、制服姿の学生がキャンパス内を歩き回っている姿をよく目にした。
僕の大学は一般的な私立大学だ。
人並みに勉強が出来れば入れる大学である。
希一はもっとずっと上の大学を目指しているため、今日の説明会に来ていなかった。
試験がなんとか終わり、キャンパス内を歩いていた時だった。
「なあ、北条ってさ…」
僕はドキッとした。
そりゃあそうだ、いきなり自分の苗字が耳に入ったのだから。
その言葉を発したのは学ラン姿の3人の高校生のうちの1人。
カバンで分かった。
希一と同じ高校だ。
僕は咄嗟に建物の影に身を隠し、耳を澄ましながら、スマートフォンを操作する。
「北条希一。アイツ、調子乗ってない?ちょっとばかりバイオリンが弾けるからって。」
「いつも音楽室で弾いていたんだろ?それを見た女の子がキャーキャー言ってたぜ。」
だから…か。
ここ最近、学校にバイオリンを持って行っているものの家で良く弾いている姿を目にするのは。
「俺、アイツのバイオリンを壊そうとしたんだ。そしたらアイツ、死守しやがってさ、代わりに背中を思いっきり蹴ってやったんだぜ。」
「アイツさ、何もやり返すことが出来なくて泥だらけになってさ、良い気味だったぜ。」
「へぇ、見たかったな。今度、バイオリンを壊せなかったら弾けないように腕折ってやったら?」
「良いな、ソレ。」
その途端、僕の中で何かがキレた。
その日、僕は大学にいた。
長期休暇の直前の単位がかかった期末試験の日だった。
その日はどうやら高校生に向けた大学説明会があるらしく、制服姿の学生がキャンパス内を歩き回っている姿をよく目にした。
僕の大学は一般的な私立大学だ。
人並みに勉強が出来れば入れる大学である。
希一はもっとずっと上の大学を目指しているため、今日の説明会に来ていなかった。
試験がなんとか終わり、キャンパス内を歩いていた時だった。
「なあ、北条ってさ…」
僕はドキッとした。
そりゃあそうだ、いきなり自分の苗字が耳に入ったのだから。
その言葉を発したのは学ラン姿の3人の高校生のうちの1人。
カバンで分かった。
希一と同じ高校だ。
僕は咄嗟に建物の影に身を隠し、耳を澄ましながら、スマートフォンを操作する。
「北条希一。アイツ、調子乗ってない?ちょっとばかりバイオリンが弾けるからって。」
「いつも音楽室で弾いていたんだろ?それを見た女の子がキャーキャー言ってたぜ。」
だから…か。
ここ最近、学校にバイオリンを持って行っているものの家で良く弾いている姿を目にするのは。
「俺、アイツのバイオリンを壊そうとしたんだ。そしたらアイツ、死守しやがってさ、代わりに背中を思いっきり蹴ってやったんだぜ。」
「アイツさ、何もやり返すことが出来なくて泥だらけになってさ、良い気味だったぜ。」
「へぇ、見たかったな。今度、バイオリンを壊せなかったら弾けないように腕折ってやったら?」
「良いな、ソレ。」
その途端、僕の中で何かがキレた。