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いつか秒針のあう頃

第4章 4話

先端が当たってから智くんが俺の中に入ってくるまでの刹那。
思わず息が詰まってしまう喉の奥から、グゥッとくぐもった音が漏れる。

本来ないものが外から押し入ってくる瞬間は、頭の芯が痺れて時が止まるように長い。

「……う……んっ……」

違和感と苦しさを凌駕して、普段は押し込めている正直な気持ちが、胸の奥から湧き上がってくる。

Don't let…….
どうか離さないで。

包み込むように覆いかぶさって来る智くんの体温に、何故だか涙が出そうになった。
自分の腿から外した手を、智くんの背中に回す。

「苦しいか?」

「あっ」

耳元での囁きが酷く甘い。
それだけでもう声が抑えられなくなる。

貫かれることでやっと、俺は観念するんだ。

取り繕う余裕がなくなって、やっと、言葉を選ぶ理由がなくなる。

「揺らすよ」

「ん……」

荒くなってる息の合間から、精一杯返事をすると、ベッドがゆっくりと軋み始めた。
抜き差しするのではなく、腰の動きで中を押してくる。

男に抱かれたことがない奴ではわからない疼きを、この人は十分知ってる。
他ならぬ俺が、何度も何度もこの人に与えて来たのだから。

智くんのやりかたは的確で、俺の理性はどんどん鈍くなっていく。

「あぁ……すご……」

「いい?」

「うん……もっと……あぁ……イイ……」

あられもなく声に出す度に、何かを脱いでいくように解放される。

仕事の影響で、正確な伝達を意識するようになって。
グループの認知度が高くなっていくごとに、理屈っぽくなった。

いつもいつも、何か言う度に誤解や曲解を未然に防ごうと努力してるのに。
嘲笑うみたいに違って伝わる。

仕事でさえそんな具合なのに、守るために何が出来るって言うんだろうか。
こんなにも無力で。

一番伝えたい愛は決して完結しないまま、俺はただ、離れて行かないでと祈るしかない。

「オレも……んんっ……キッツイ」

「前っ、前もっ、触っ……」

今だけはアイドルじゃなくていい。
キャスターじゃなくてもいいんだ。
形振り構わず欲に忠実でいい。
この人を求めてもいいんだ。




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