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いつか秒針のあう頃

第5章 5話

出さないでイッてるから、いわゆるドライオーガズムってやつなんだろう。

正直、こんなに凄いとは思わなかった。
前でイク時の比じゃない。
冗談抜きで呼吸が止まる。

だから苦しい。
だけど気持ちいい。

頭がバカになって、次第に俺は『苦しい』と、『気持ちいい』と、あと、俺の上に乗ってる智くんの重さしか認識できなくなる。

「待ってよ……うっ……もう……
 無理だって……無理っ……っく……」

3回目イかされた後で一旦抜いて楽な体勢にしてくれたから、俺は必死で智くんに訴えた。
嗚咽交じりに懇願してる自分を情けないと思う余裕もない。

気持ち良すぎて怖いんだよ。
貴方と違って俺は臆病なの!
自分が自分でなくなるなんて怖くて無理!!

「そんなダメ?」

頷く俺に智くんは笑い含みで言って、顔を手で拭ってくれる。
もう目がチカチカして、視界いっぱいに銀のテープが飛んでるみたいだ。
智くんの顔もよく見えない。

「ふふっ、メッチャ泣いてるじゃん。かわいい」

かわいくねーよ。
貴方が泣かしたんだろっ。
嬉しそうにゆーな。

精一杯の抵抗で智くんの手から顔を逸らし、そっぽを向く。
智くんは気を悪くした様子もなく、どこまでも優しい声で真上からギョッとすることを言った。

「もう少し泣かせたいなぁ……。
 あと2~3回イッたら、全部わかんなくなって気持ちいよ?」

聞いた途端にブワッと涙が出た。

「やだっ!!
 ……うっ……無理、って、言ってんのに……
 なんで聴いてくんないの……うぅっ……」

「あ~~わかった、わかった、ごめん。
 優しくね。優しくするから」

唇が合わさって、滑り込んで来た舌が、言葉通りに優しく口中を撫でる。
目を閉じてそっちに気を取られている隙に、智くんが身じろぎしてヌルッとまた俺の中に入ってきた。

「んっ……ふ……んん……」

キスしたまま、ゆっくりと動き始めて。
ゆらゆらと揺らされ、体の中のシコリが擦られる。
馴染んだ感触にホッとした。

好きだよ、智くん。
愛してる。
だから不安にさせないで。

すっかりおかしくなってる涙腺から、また涙が流れるのがわかる。
堪らなくなって、腕を持ち上げて智くんを抱きしめた。




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