テキストサイズ

いつか秒針のあう頃

第1章 1話

揃いの部屋着に着替えて、リビングのソファテーブルでカレーをいただく。
キッチンのダイニングテーブルもあるのだが、二人で飲むときはいつもここだ。
智くんのカレーはスパイスが効いてるから、二人してビールを水代わりに飲みつつ近況報告をした。

しばらくぶりとは言っても、まだ年が明けて一週間足らずだ。
例年、年末年始はこんなもんだし、わずか数日で大事件が起きるわけでもないのだけれど。

何しろコロナのことがあるし、相葉くんの体調のこともある。
今はささいなことでもお互いに情報共有をして、不安の種をつぶしておきたい。
こっちから訊かないと、多分この人は言わないから。

「ご両親は? お変わりなかった?」

「うん、あの人たちはマイペースだし。
 嵐が休みに入るから何か言ってくるかと思ったけど、全然なーんも言わないの」

「そっか……。
 ね、これメッチャ美味いんだけど。
 もしかしてウチのお袋に訊いた?」

ツマミに作ってくれた蛸とシメジのバター炒めが凄く美味くてびっくりする。
カレーの匂いで分かんなかったけど、食べてみるとニンニクが効いてて、あ~~そうそう、こういう味だったよ、と懐かしく思い出した。

「あ、ほんと? こんな感じかな、と思って作ってみた。
 美味い?」

「メッチャ美味い。バターと醤油とニンニク?」

「めんつゆ」

「ああ! 麺つゆかぁ、なるほどね。
 これは酒が進むな」

二本目のエビスを開けて二人のグラスに注いだ。
智くんは今日、いつもよりもゆっくり飲んでいる。

「今日は何してたの?」

「え?」

「いや、何してても全然良いんだけどさ。
 さっき俺が帰って来た時、何かぼんやりしてたから」

「……? ああ……。
 ごめん、気がつかなくて。
 いや気がついてたんだけどね?
 なんか、玄関開く音はわかってたんだけど、翔ちゃんが帰って来たって思わなくて……」

「へ?」

「ん、っとね……。
 なんかオイラ、時間? の経ち方? がよくわかんなくなってんの」

困ったように笑って、一生懸命に考えながら。
ゆっくりと話してくれる内容は、ちょっとだけ、俺を切ない気持ちにさせるものだった。




ストーリーメニュー

TOPTOPへ