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いつか秒針のあう頃

第2章 2話

「なんかねぇ、実家にいるのは正月休みだから普通のことじゃん。
 でも自分が休みになって、やっぱり何か違うんだよね」

「ああ、数日の休み、ってわけじゃないからね」

「そう」

答えながら、智くんがゆっくり頷く。
俺はなるべく話の邪魔をしないように、言葉を控えようと自分に言い聞かせる。

今はもう家に居る。
仕事中じゃないんだから、ツッコミは要らないし、ウケを狙わなくてもいい。
オチも要らない。
尺も関係ない。

この人の言葉を待つ時間はたっぷりある。

「今までみたいに、何日までは休みだから、実家には何日まで泊って、仕事初めが何日からでぇ、とか、そういうのがないじゃん?
 ほんで、でも自粛とかで何も出来ないから。
 時間余るなぁ、と思って、ちょっと絵ぇ描いたりしてたんだけど……。
 んで描いてて集中し出すと、今度は時計見るとあっと言う間に凄い時間経ってたりして。
 何か変な感じなんだよね、ふふっ」

「ああ……何となくわかるよ……」

「うん。
 ほんで何か、オイラ元々反応遅いじゃん。
 んふっ、何か増々遅くなってて」

チラッと伺うように俺を見た顔が、可笑しそうに笑っている。

「家で宅配とかさ、ピンポン来て。
 聞こえてるんだよ。
 あ、今、音したな、って思って。
 ああ、ピンポンか、って。
 あ~~通販だな、って思うんだけど、何か体動かないんだよね。
 気がついたら30分とか経ってて……。
 時計見て、ああ、もう宅配の人行っちゃったなぁ、って。
 ほ、んで、だから、さっきも翔ちゃん帰って来たんだな、って鍵の音したからわかってたんだけど。
 座ってるうちに、あれ、またいっぱい時間経ってる? みたいな感じしてきて。
 もしかして翔ちゃん、帰っては来たけど、オイラが座って動けない間にまた出掛けちゃったのかも、って」

「……座ったまま考えてたら俺が部屋に入って来たのね」

「そう。ふふ。変だよね?」

俺は小さく頭を振って見せた。
変じゃないよ、智くん。




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