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いつか秒針のあう頃

第3章 3話

不思議なもので、抱くよ、と言われると、その瞬間からもう 抱かれる側になってしまう。
いや、実際に言われたのは、抱くよ、じゃなくて、さすよ、だけども(笑)。

繋がるまでの間、前段階で、お互いに優しく触れ合いながら。
緊張を解いていく行為の最中は、どっちがどっちの側でも大差ない筈なんだ。

でも、なんでかな。
自分は受け入れる方なんだと思うと、体より先に心が準備すると言うかさ。
ガツガツ求めるんじゃなくて、差し出すような。
そういう気持ちに、自然となってしまう。

「ん……はぁ……」

あんまり情けない声を聴かせたくないから、なるべく呼吸で 快感を逃がす。
この人に本気で来られたら、結局嬌声を響かせることになるのはわかってるのに。

「気持ちい?」

「う、ん……多、分……はぁ……」

腕枕してくれて、向かい合わせに横たわった俺の脚は、片方が智くんの腰の上に乗ってる。

何度もキスをしながら合間で話しかけてくるのは、久しぶりに受け入れる俺を気遣ってのことなんだろう。

俺の息が乱れて行くのを、智くんは嬉しそうに、優しい顔で見てくるから。
恥ずかしくて視線をそらしてしまう。

別に今までだって嫌がってたわけじゃない。
付き合いたての頃はお互い盛りがついてて。
二人とも上に乗りたがったから、律儀に大体半分ずつになるようにしてたってだけでさ。

今思うとそれも青春って感じで、真面目にそんなこと決めてたのが逆に猿で笑えるけど。

いつからか智くんはどっちでも良いよ、ってなったから俺が乗る方が多くなって。

ただ、たまに。
なんだろ、なんか、きっかけがあんのかな。
今日みたいに妙にキッパリと、俺が、って智くんの方から断言する時がある。
滅多にないから、俺はそういう時は逆らわないんだけど。

「あぁ……」

腿の間に挟まれた手首が絶妙に擦ってる。
長い指が、さっきから 体の中で動いてて。

「ふふっ、多分て何だよ」

「う、ん」

手首が動くたびにザワザワして、もどかしさが大きくなる。
指で中からじんわりと押されてる、その圧迫してくる力が次第に強くなってくのがわかる。




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