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美しい影

第3章 転機


本当に歌が上手い奴って言うのは耳が良い。
亜美はなぜそんなに耳が良かったのか。

実は亜美の実家にはテレビが無かった。
そして母親の虐待から避難したり、母親の男が家に来るたびに、亜美は近くの公園に逃げてそこで過ごす時間が多かった。

その公園の側にはピアノ教室があり、そこから聞こえてくるピアノをずっとラララで歌って1人遊びをしていたらしい。
それを毎日のように続けていた。

亜美は基礎的な発声練習を無意識のうちに続けていたのだ。

また、亜美は英語を全く喋れないのに、直ぐに洋楽の曲を耳コピして歌う。
歌詞を読んで覚えるわけじゃ無く、聴こえたままをコピーするから発音もキレイ。

バンド仲間のアメリカ人に亜美の洋楽を聞かせたら、めちゃくちゃ上手いと褒めていた。

なので、洋楽もどんどん聴かせた。けれど、亜美は歌詞の意味が全く分からない。
だけど歌に乗せる感性は本当に天才的だった。
自分が感じた曲のイメージで歌う。

亜美はテレビを見ないので、普通の人が様々な番組のBGM等で無意識に植えつけられている有名曲のイメージが無い。

なので俺が思っているのと真逆の感情で歌う事もあり、それがまた新鮮で魅力的だった。

俺自身も亜美の歌声に出会い、それまでとは違う新しい音楽の道へ進み始めていた。



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