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美しい影

第4章 過去


亜美は暇さえあれば俺の家に遊びに来ていた。

合鍵を渡したままなので俺が帰ってくると亜美がすでに居たりもした。そして必ず歌っていた。

また、いつの間にか冷蔵庫の中に料理が置いてあったり、洗濯物が干されてたり。

この頃から俺と亜美の関係性も少しずつ変わり始めていた。

俺はバントを離脱してからはバイトか楽器部屋にこもっての曲作りに明け暮れる毎日。
けれど、それまでロックばかりだったので、亜美に合うような曲をなかなか作曲できないでいた。

亜美の歌声に出会ってからすでに3ヶ月。
頭の中にあるイメージを楽曲に落とし込む。それをまた変更する。それの繰り返し。
最初は満足いく楽曲にならなかったが、徐々に亜美のイメージに音が追いついてきた。

今はデモ版で作った電子ピアノやギター、ベースの音をパソコンに入力し、それと睨めっこしながらの編曲作業。

こんなに一曲の為に向き合ったのは初めてだった。




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