
居候と実況者が恋に落ちるまで。
第2章 本当は3人暮し、だったり?
「ふ、ははっ高月さん、面白いね」
一色さんが、笑った。
昨日までが、さっきまでが嘘みたいに。
え、あれ…?
「もしかして、俺は飯食わない生き物だと思ってる?そんなこと、ふふ、あるわけ…あははっ」
そうだ、やっぱり。そう。
あの扉の向こうから聞こえてた声は一色さんの声。
聞き間違えるなんてことない、私の好きな声。
「一色さん、やっぱり、あの、一緒にご飯食べませんか。誰かと一緒に食べた方が美味しいですから」
「…最初に俺が誘いを断ったのは、無理させたくなかったからなんだけど嫌な思いさせてたら、ごめん。…仕事もあるから、じゃあ夕飯だけ」
そうだったんだ。私のために断ってくれてたんだ、関わりたくないからだって勝手に思ってた。
「はい、じゃあ今夜はミートソーススパゲティにしますね、お肉たくさん入れます。あ、麺の量はどのくらい召し上がりますか?」
そうと決まれば、腕を奮わなくては。
ここに来てはじめてのふたりご飯になるから。
「・・・とりあえず5人前茹でて貰えると」
「ふぁ?」
***
まさか一色さんが凄く食べる方だったなんて。
あれから私は放心状態のままパッと部屋を出されたのだけど、まだ吃驚は続いている。
あんなに細いのに、いいなぁ羨ましい。
…うん、こんなことを考えている場合じゃないんだった。玄関の掃除が終わってないし、今夜の食材の買い出しにも行かないとならない。
誰かのためにご飯を作るのが久しぶりだとこんなにわくわくして、満たされるなんて知らなかった。
「さっさと玄関掃除やっちゃお!」
そうすれば、あとは楽しい時間がやってくる。
・・・そういえば、声の主が一色さんだということは分かったけどお仕事をしているはずの一色さんがあんなに笑ってるなんて、なんか不思議。
誰かと打ち合わせでもしながらお仕事してる可能性もあるけど、なんていうか笑い方がそういう話をしているようには思えないんだよなぁ…。
ああ、一つ解決したと思ったら次はこれか。
一色さんは一体なんの仕事をしているの?
