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居候と実況者が恋に落ちるまで。

第1章 事実はゲームよりも奇なり!


紗夜side


「ごめんね〜紗夜ちゃん。うちも厳しいんだよ」

そんな簡単な言葉で仕事をクビになってから数日、日雇いのアルバイトで食い繋いでいた私__高月紗夜は住めば都の我がボロアパートの前で立ち尽くしていた。

〖住民の皆さまへお知らせ

コトリ荘は老朽化と管理人の高齢化により、今年度末で取り壊されることとなりました。〗

確かに戦後すぐ建てられたというコトリ荘はあちこち軋むわ、すきま風に害虫の侵入と多くの問題を抱えていることは知っていた。
管理人のトキおばあちゃんは先日喜寿祝いをしたばかりだった。

分かってはいたことだったけど。

なぜこのタイミングなのだろうか。こんな失業中の高卒風情じゃあすぐに次の家は借りられない。今年度末ってことは次の3月、あと3ヶ月無いなんて。

ハローワークに行ったってこのご時世だ。職が見つかるまでどれだけかかる?それから引越し費用はどうしよう、なけなしの貯金が遂に底を突く時が来てしまうのか?

ああ…バイト帰りにコンビニで買った温かいチキンが手の中で冷えていく。今日は頑張ったから奮発して買ったのに…なんでこんなことに?

絶望から抜け出せない。
先のことを考えなきゃいけないのに。

そんな時だった、コートのポケットに入ったスマホが震えたのは。取り出して見た文字の羅列に安堵を覚えたのは。

「もしもひ…リンちゃぁん!」

リンちゃん、それは私の小学校からの友の名前。
本名は林田弓理__ハヤシダユミリ、である。

『ちょっと紗夜、その声泣いてんの?』

「どうしよリンちゃん!私このままだと野垂れ死んじゃう・・・」

『よし、落ち着け。とりあえずうちにおいで。私も紗夜に話があるから、な?』

「う"んっ」

仕事が無くなって、このまま家まで無くしたら、私の手元に残るのはこの冷めきったチキンと充電が残り23%のスマホと現金1589円・・・。

どうか神様!せめて、せめて寝床をください!


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