居候と実況者が恋に落ちるまで。
第1章 事実はゲームよりも奇なり!
***
リンちゃんの家は我がコトリ荘から徒歩15分。
閑静な住宅街にある綺麗な庭付き一軒家だ。
「いつ来てもバラの良い香り〜」
なんでもリンちゃんのお母さんが園芸、特にバラを愛して止まないらしく見たことも無い数・種類のバラがお庭に咲いているからだ。
そんなお母さん自慢のバラが生み出したアーチを抜けると、玄関のドアの前にリンちゃんが立っていた。
「紗夜、待ってたよ。…ってなんでコンビニチキン持ってんの?」
「このチキンは私の絶望をすべて見届けてくれた唯一の存在なんだ…無下には出来ない…!」
「あ〜はいはい、ほら私の部屋に行こう。まだ外は寒いからね。温かいココアでも注れてあげる」
私がここに来るまで考えて絞り出した渾身のチキンネタを軽くスルーしながら、リンちゃんはあっという間に私を部屋に連れて行き言葉通り温かくて甘いココアをご馳走してくれた。
「それで?何があったの」
「それが…かくかくしかじか、まるまるくまぐま」
今日までに起こった主な2つの出来事を事細かに話した。リストラされたこと、家がなくなること。
「・・・ってことがあって」
「それであんなに取り乱してたのか」
ふむふむ、とやけに冷静なリンちゃんに私もなんとか落ち着いて来た。やっぱり持つべきものはリンちゃんだ。
「それならちょうど良かった。紗夜に紹介したい人がいて、今日はそれで電話したんだ」
明るい声とは裏腹に、リンちゃんは深い溜息をつく。え、なに、もしかしてリンちゃん結婚とかするの?それで相手はお見合いであんまり好きじゃないけど、とんでもないところから貰った話で断れなくて私に結婚の話と相手の紹介をするまでになってしまったとか?!
「リンちゃん結婚するの?!」
「は?なんでそういう話になんの。…違うって。私が紗夜に紹介したい人っていうのは私の従兄弟なの」
いと、こ…?
「従兄弟さんと結婚?!」
「違うわ!簡単に言うとね、従兄弟の家でお手伝いさんというか居候をしてほしいんだよ」
「?」