テキストサイズ

ドSな兄と暮らしています

第2章 生活

兄ちゃんはリビングのテレビを消しながら、うとうとしてきた私に、歯ブラシを持ってくる。

「しお。ほれ、ちゃんと歯磨き。布団で寝るよ」

「んー、ねむいよーう」

「汐夏。言うこときくよ」

兄ちゃんが私のことを汐夏と呼ぶ時、真面目な話をする時か、これから怒るよの合図だ。

やばいやばいやばい。起き上がらないとまずい。

「歯ブラシ受け取らないと俺が汐夏の歯を磨くけど?いいの?」

兄ちゃんは歯科衛生士なので、仕事柄、歯磨きのこととなるとこと細かいし口うるさい。
歯ブラシだけで終わればいいけれど、歯間ブラシやデンタルフロスまで登場するところまで見えている。

そして、ここで虫歯なんか見つかろうもんなら、一発で歯医者行きが確定している。
私は飛んでいきそうな意識を捕まえて、ぱっと起き上がると、

「自分でやる!!」

と宣言して、これまた眠りそうになりながら歯を磨く。

兄ちゃんは、私が歯を磨く間も、鬼のような目でちゃんと見ているから怖い。
背中に視線を感じながら、とりあえず3分、とりあえず3分……と意識を保つ。



一度、めちゃくちゃ眠かった時に、適当に歯磨きを終わらせたら、

「汐夏、ちょっと待て」

とリビングに引き戻されて

「はい、座る。はい、寝る」

「え、やだ、なんで、ちゃんと磨いたよ」

「あれのどこら辺がちゃんとなんですか。はい、早く寝たい子は言う通りにしな。」

……というような調子で、強制膝枕歯ブラシの刑に処されたことがあった。
嫌々正座させられたところを、後ろからゆっくり倒され、膝に頭がすっぽりハマる。

「ほんと、手のかかる子だ。はい、ちゃんと歯磨きしますよ、口開けてください」

真顔で敬語を使ってくる兄ちゃんは、ほんとに怖い。マジで怖い。
歯が大事なのはわかるけど、何より、ずっと怖い顔で歯を覗き込んでくる兄ちゃんが怖かったのを覚えている。



無事に歯磨きを終えた23時過ぎ、襖1枚で隔てた部屋で、お互いの布団に入って眠る。

「しお、おやすみ」

「おやすみ、兄ちゃ……」


そっと目を閉じると、直ぐに眠りに落ちた。
私たちの生活はこんな感じで続いていく。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ