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ドSな兄と暮らしています

第3章 たった1人の家族

ーー泣いても悲しんでも、いいんだよ。
今朝の兄ちゃんの言葉が、頭の中にフラッシュバックした。
あんなに私のことを心配して、大事にしてくれて、愛情を注いでくれる兄ちゃんが、そんなことする訳ない。

デタラメにデタラメを重ねただけだとわかっていたけれど、抑えきれなかった。



私を傷つけるために、兄ちゃんを悪く言うのは許せない。


「……バカなの?」

小さい声でそう呟いた。
私の心は沸点に達していた。
『あ、やばい』
そう思った瞬間には、体が勝手に動いていた。

教壇に置いてあった花瓶を手に取り、中の花を取り出すと、入っていた水を、その女子に思いきりよくぶっかけた。

「きゃーー!」

周りにいた女子の悲鳴を聞く。
大口を叩いていた女子は、半泣きだった。

一瞬ざわめく教室。
でも直ぐに静まり返ったのは、私の顔から色が無くなっていたからだ。
冷酷な目をして、水に濡れた女子を見下していた。

「兄はたった1人の家族だ。デタラメ流して適当なこと言ったやつは、全員ぶん殴る」

泣くでも、叫ぶでもなく、自分でも怖いくらい冷静に低い声で言い放った。

「おい!!!!!何やってんだ!!!」

ちょうどその時、チャイムがなって、教師が入ってきた。

花瓶を握りしめて立ち尽くす私と、
濡れて泣いている女子。

その場にいた全員が、恐ろしく押し黙っていた。


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