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ドSな兄と暮らしています

第3章 たった1人の家族

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私は昼休み以降、教室に戻ることはなかった。保健室に連れていかれた後は、誰にも何も話さず、保健室の布団にずっとくるまって震えていた。

何度か、養護の先生が私に話しかけてきたけれど、何も話せなかった。教室では、私の友達が復旧を手伝ってくれたらしい。
高校生同士の揉め合いだと見なしたのか、割って入るのが面倒だと思ったのか、養護の先生以外は何も聞いてこなかった。

もうどうでもいいと思った。
どうなろうが、どう思われようが。
ただ、兄ちゃんのことを悪く言われた、その事実だけが嫌だった。

「ご迷惑、おかけしました。本当にすみません」

夕方、仕事を早く上がってきた兄ちゃんが、保健室まで迎えに来た。
兄ちゃんは、養護の先生と私の担任と、3人で少し話をしていた。担任は、昼休みに教室でいて見ていた子たちから聞いたことを淡々と伝えて、席を外した。

「海野さん、昼休みから誰にも何も話していません。変な話、手を出してしまったのは海野さんなのですが、ずっと体をガタガタ震わせているのを見ると、相当、心に何か負担がかかったんだと思います。ご家庭で、いちばん信頼できるお兄様が、心を楽にしてあげられるかもしれません」

養護の先生が、最後に兄ちゃんにそう言っていたのが聞こえた。兄ちゃんは養護の先生に礼を言うと、私がいるベットのカーテンを開けた。

「汐夏。帰るよ。先に外で待ってる。自転車回収しておくから」

それだけ言い残すと、保健室から出て言った。

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