
ドSな兄と暮らしています
第3章 たった1人の家族
5
「こっちおいで」
立ち尽くして、ボタボタと、静かに涙を流す私を見て、兄ちゃんは驚かなかった。
迎えに来たときから、私の中にずっと溜まっていた気持ちを見抜いていたようだった。
兄ちゃんは、私の手を引くと、自分の胸に顔をうずめさせた。私が体を預けるのを確認すると、力強く、ぎゅーっと抱きしめた。
兄ちゃんの胸に頭をくっつけると、兄ちゃんの心臓の音がきこえた。ゆっくりとしたそのテンポに耳を傾けてみたら、安心して嗚咽が漏れた。
「頑張ったな。ずっと苦しかったんだね」
ぎゅっと抱きしめながら、耳元で囁く。
「もう大丈夫だ、大丈夫」
大丈夫、大丈夫と言われる度に、冷えた心の温度が上がって、涙が転がり落ちる。失っていた感情に色がつく。私はずっと、兄ちゃんの大丈夫が欲しかったんだ。
ここに兄ちゃんがいる、
それだけを求めていたんだと思う。
「こっちおいで」
立ち尽くして、ボタボタと、静かに涙を流す私を見て、兄ちゃんは驚かなかった。
迎えに来たときから、私の中にずっと溜まっていた気持ちを見抜いていたようだった。
兄ちゃんは、私の手を引くと、自分の胸に顔をうずめさせた。私が体を預けるのを確認すると、力強く、ぎゅーっと抱きしめた。
兄ちゃんの胸に頭をくっつけると、兄ちゃんの心臓の音がきこえた。ゆっくりとしたそのテンポに耳を傾けてみたら、安心して嗚咽が漏れた。
「頑張ったな。ずっと苦しかったんだね」
ぎゅっと抱きしめながら、耳元で囁く。
「もう大丈夫だ、大丈夫」
大丈夫、大丈夫と言われる度に、冷えた心の温度が上がって、涙が転がり落ちる。失っていた感情に色がつく。私はずっと、兄ちゃんの大丈夫が欲しかったんだ。
ここに兄ちゃんがいる、
それだけを求めていたんだと思う。
