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ドSな兄と暮らしています

第3章 たった1人の家族

兄ちゃんは、ひとしきり泣いた私をゆっくり手放す。
ぐしゃぐしゃの顔を上げて、まだ離して欲しくないと、兄ちゃんの目を見る。
兄ちゃんは、笑いながら私の頭を優しく撫でて、背中を向けると、私の腕を掴み、自分の腰に巻き付ける。

私はその手にぎゅっと力を込めた。

「昔は、汐夏が泣いたあとは、おんぶだったけれどな。大きくなっても何も変わらないな」

そう言って、キッチンへ向かう。
私は、兄ちゃんの背中に顔を押し付けて、ぎゅっと抱きついたまま、歩き出す。
今は一瞬でも離れたくなかった。

兄ちゃんはキッチンでココアを作り始めた。
私をくっつけたまま動く兄ちゃんは、思い足取りで、もたもたと動く。
それがおもしろくて、私がほんの少し声を出して笑う。兄ちゃんは、背中から少しだけ漏れた笑い声に振り向いて、

「やっと元気になってきたね」

と私の頭を撫でた。

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