ドSな兄と暮らしています
第6章 汐夏の挑戦
「でも、ちょっとだけ寂しいから、せめて卒業するまで子ども扱いさせて?」
兄ちゃんは、私の頭をよしよしと撫でると、またぎゅーっと抱きしめた。小さな子どもにするみたいに、ぎゅーっと。
苦しくて、はしゃぎながらきいた。
「どういうふうに?」
兄ちゃんは、抱きしめていた腕を離すと、少し考えてこう言った。
「んーーと……今日はすき焼きの卵、割ってあげる」
すかさず私が突っ込む。
「それならいつでもやってよ!!」
「甘えん坊! 大人は自分でやるんだぞ!」
大真面目な顔で言う兄ちゃんに、堪らず吹き出した。声を上げて笑う私に、兄ちゃんが言った。
「ほら、早く飯にするぞ〜!手洗って席つけ〜!」
兄ちゃんは台所に消えていく。
「はーい〜」
間延びした返事をしながら、私もその後をスタスタとついていった。
子どもが終わるって、どういうことなんだろう。
大人になるって、兄ちゃんとの関係が少し進展するってことなのかな……
淡い期待が、少し色を見せる。
春はもうすぐそこまで来ていた。