テキストサイズ

優しく繋がる赤い糸

第4章 1st side -Natsume-*Act.4

 萌恵は瞠目した。
 いつも穏やかにやり過ごす夏目が苛立ちを露わにするなんて、考えもしなかったのだろう。

「――ごめんなさい……」

 萌恵は夏目から視線を外し、身を縮ませながら謝罪した。

「夏目さんに拒絶されたような気がして、酷いことを言ってしまいました……。夏目さんのような真面目な人が、他人をからかうようなことなんて絶対するはずないのに……」

 今にも泣きそうになっている萌恵を見下ろしながら、夏目の心が酷く疼いた。


 他人をからかう――


 この言葉は特に、夏目に重くのしかかってきた。
 萌恵に告白された時、夏目は、心の底からからかわれていると思ってしまったのだ。

 だが、萌恵と逢瀬を重ねるうち、萌恵が自分をからかったのではなく、むしろ誠実な気持ちで夏目を想い続けてくれていたことにようやく気付いた。

(酷いことをしていたのは俺だな……)

 嫌悪感を覚えた夏目は眉をひそめ、首を横に振った。
 むろん、萌恵の想いを踏みにじり続けてきた自分自身に、だ。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ