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優しく繋がる赤い糸

第6章 1st side -Natsume-*Act.6☆

 歩くこと十分。
 ようやく、アパートに辿り着いた。

 夏目の部屋は106号室。
 一階の角部屋だ。

「ここなんですね」

 興味深げにドアを見つめる萌恵の横で、夏目は荷物を一時的に下ろし、代わりにチノパンのポケットから鍵を取り出した。
 鍵穴に差し込んでクルリと回すと、カチリと音を立てて解除された。

 中は冷えきっている。
 歩いてきた分、少しは身体が温まっているものの、それでも寒いのには変わりない。

「入って」

 夏目が萌恵に声をかけると、萌恵は軽く会釈し、ブーツを脱ぎ始めた。
 もちろん、手にしていた荷物は下ろしている。

「お邪魔します」

 挨拶した萌恵は、夏目のあとに続いて中に入ってくる。

 台所を経由して畳敷き六畳間の居間に着くと、蛍光灯の紐を引っ張って電気を点ける。
 そして、コタツとファンヒーターの電源を順に入れてゆく。

「あったまるまで時間がかかるけど」

 そう言ってから、萌恵に適当に座るように促す。

 萌恵はコートを脱ぎ、丁寧に畳んで側に置く。
 だが、さすがにそれが気になった夏目は、すぐにコートを預かり、ハンガーにかけ直した。

「それじゃ、準備するからちょっと座って待ってて」

「いえ、手伝います」

「ダメだよ。君はお客さんなんだから」

「でも、ジッとしてるのは悪いです」

 萌恵は夏目を押し退ける勢いで台所へ戻る。

(ほんとに頑固な子だ……)

 夏目は微苦笑を浮かべながら、萌恵に続いた。

 四畳程度の広さしかな台所は、ふたりが立つと一気に狭くなる。
 今は買ってきたものを出したり、棚から食器を出したりしている程度だからさほど気にならないが、さすがに料理をするには厳しい。

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