テキストサイズ

優しく繋がる赤い糸

第3章 1st side -Natsume-*Act.3

 その日も夏目は萌恵と外で逢った。
 いつものように映画を観て、終わってから食事をする。

 今日は映画館近くのファミリーレストランへ入った。
 今までは萌恵を飽きさせないため、夏目なりにリサーチし、イタリアンや洋食、和食や中華と様々な店に行ったが、今日に限ってそこまで頭が回らず、結局、無難な線に落ち着いてしまった。

 萌恵は相変わらず、不満を漏らさない。

「食べたいものがあるなら遠慮なく言っていいから」

 そう促すも、萌恵は「大丈夫です」と口元に笑みを湛えた。

「それに、ファミレスだったら何でもあるじゃないですか。専門店に行くより、かえって選ぶ楽しみがあると思いますよ?」

 萌恵の言うことはもっともだと思う。
 だが、それでもいたたまれない気持ちになってしまう。
 かと言って、他に良い店を探す時間もなかった。

 ファミレスの従業員に案内され、窓際の席に着いてから、わりとすぐに注文するものを決めた。
 萌恵が言っていたことに矛盾しているような気はしたが、夏目はあえて突っ込みを入れなかった。

 料理が届くまでの間、それぞれドリンクバーから飲み物を選ぶ。
 夏目はコーヒーを、萌恵はレモングラスのハーブティーを淹れて再び戻った。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ