テキストサイズ

Melting Sweet*Extra

第4章 悪戯にはほろ苦い媚薬を*Act.2☆

「また、やってみます?」

 俺の問いに、「冗談じゃないわ!」と怒鳴られるかと思った。

「たまになら……」

 意外な反応だった。

「俺にもっと苛めてほしい、ってことですか?」

「さあ……」

 いざとなると、素直に応じなくなる。
 だが、やっぱりそんな夕純さんが可愛いと思ってしまう。

 ――惚れた弱み、っつうやつだろうな……

 そんなことを考えていたら、俺の口元が自然と緩む。

「――衛也君」

 くぐもった声で夕純さんが俺の名前を呼び、続けた。

「ありがと……」

 いきなり礼を言われ、さすがに面食らった俺は、つい、「何がです?」と訊き返してしまった。

 すると、夕純さんは頭をもたげ、俺を真っ直ぐに見つめてきた。

「衛也君のお陰で、私もちょっとは可愛げのある女になれた気がするから」

「今さら何を言ってるんですか」

 夕純さんの言葉に、俺は目を細めて口を綻ばせた。

「夕純さんは可愛いですよ。以前からずっと」

「――本気で言ってる?」

「本気ですが?」

「――ほんとに馬鹿ね」

 憎まれ口を叩きながらも、夕純さんは嬉しそうに微笑んでいる。
 俺の台詞はまんざらでもなかったということだ。

「可愛い夕純さんは俺だけのものです」

 そう告げると、俺は夕純さんの唇に軽くキスし、抱き締めていた腕を緩めた。

 夕純さんを、見下ろす格好になる。

「また、苛めていいですか?」

 俺の言わんとしていることを、夕純さんもすぐに察したらしい。
 少しだけ間を置き、それから諦めたように、「好きにすれば?」と返してきた。

「なら、俺の好きなようにしますよ」

 俺は満面の笑みを向けてから、夕純さんに口付けた。
 先ほどよりも深く――

[悪戯にはほろ苦い媚薬を-End]

ストーリーメニュー

TOPTOPへ