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Melting Sweet*Extra

第1章 もう少しだけ*Act.1

「夕純さんの昔の料理は食ったことないけど」

 俺は訥々と言葉を紡いだ。

「散々罵られたからこそ、ここまで上達したんじゃないですか? まあ、言い方はともかくとして。料理に限らず、夕純さんは自分を過小評価する癖がありますけど、俺は夕純さんは人一倍の努力家だって思ってますよ」

「――努力が報われないことだってあるけどね」

「またそんなことを」

 俺は小さく溜め息を漏らし、自分の元へと夕純さんを引き寄せた。
 小柄な彼女の身体は、大人しく俺の中にすっぽりと包まれる。

「少なくとも、俺は夕純さんを尊敬してますよ。夕純さんの頑張る姿は俺の励みになってますから。女性の夕純さんが頑張ってるんだから、俺ももっともっと努力して、少しでも夕純さんに相応しい男になれたらって、いつも思ってます」

「その辺の女の子に比べると全然可愛げがないわよ?」

「夕純さんの方が可愛いです」

 自分で言いながら、恥ずかしくなってきた。
 でも、夕純さんが可愛いと思っているのは本当だから訂正はしない。

「――馬鹿」

 夕純さんはポツリと漏らし、俺の背中に両手を回す。
 そして、頭をもたげて俺を見上げた。

 真っ直ぐな夕純さんの視線は反則だ。
 本人は全く自覚がないようだが、可愛い顔で見つめられると理性が吹っ飛んでしまいそうになる。

 俺は心の中で葛藤を繰り返した。
 このまま、夕純さんを壊してしまおうかとも思ったが、まだ食べている最中なのだからと、どうにか自分を抑えた。

「あとで夕純さんをじっくり味わわせてもらいますよ」

 夕純さんの唇に軽く口付けてから告げた。

 夕純さんはやはり、「馬鹿じゃない」と軽く憎まれ口を叩きつつ、頬をほんのりと染めている。

 再び、理性と感情が戦う。
 可愛い反応は狡いと思いながら、俺はまた、夕純さんに軽くキスした。

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