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ママ、愛してる

第4章 由香

「おかえりなさい。絢子ママ、新婚旅行はどうでした」

うちに来た由香ちゃんの第一声。

ママは一瞬動揺した表情を見せたけど、すぐに立ち直る。
さすがに長い間、客商売をしてきただけはある。

「よかったわよ。10年振りの二人だけの旅行だからね。まあ、新婚旅行みたいなものよ」
あわてて否定することもなく、切り返した。

「喫茶店始めてから、どこにも連れていって上げられなかったし」

「そうですよねえ。絢子ママ、あたしがバイト始めてから、一度もお店を休んだことなかったし」

由香ちゃんがしみじみと言う。

「まあ、自分でもよく働いたと思うわ。幸介には、ずいぶん寂しい思いもさせたけど」

「そうですよね。でも、幸介君、ぐれたりしないで、県内いちばんの高校に合格して、
ホントに尊敬してます」

「ありがとう。でも、由香みたいな優秀なバイトが来てくれたお陰よ」

「そんなに言われると、ちょっと恥ずかしいです」
由香ちゃんが照れ笑いをする。

「これ、お土産。○○温泉の近くの地酒。すごく口当たりが良くて飲みやすいの。でも、由香は酒豪だから、飲みすぎないようにね」
ママが釘を刺す。

由香ちゃんはペロッっと舌を出した。

「ありがとうございます。ほどほどに嗜みます」


それから三人で、近くのステーキハウスに向かった。

一流店には敵わないけど、地元では人気の店だ。

由香ちゃんと僕は、300グラムのサーロイン、ママは150グラムのヒレステーキを注文した。

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