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ママ、愛してる

第5章 瀬戸内

「そうなん。いい、お母さんやねえ。いりこは、手間かかるのに」

「ええ、すごくいい母です。僕なんかにはもったいないくらいの・・・」

それを聞いて、おばさんがコロコロ笑う。

「もったいないなんて・・・。そりゃ、夫婦で言う事じゃろ。自分には勿体ない女房や、とか。
親子でそんな言い方、あるまいって。」

そう言うと、また笑う。

「そうなんですか?」

「そやけん、ホントにいいお母さんみたいやね」

「はい。女手ひとつで僕を育ててくれて・・・」

僕は涙ぐみそうになって、あわてて味噌汁を啜った。

「まあ、人それぞれ、いろいろな事情があるけん、うちでしばらくゆっくりしとったらええわ。味噌汁とご飯、ここにあるけん、好きなだけ食べたらいいわ。セルフサービスやけどね」

そう言うと、おばさんは食堂を出ていった。

「ありがとうございます」


僕は泣きながら、心のこもった朝食をたいらげた。

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