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ママ、愛してる

第6章 交錯

ホテルをチェックアウトすると、ちょうど午前中最後のフェリーの出港時刻だった。

デッキに並んで遠ざかる島を見ながら、
僕たちは二人とも無言だった。


その時、ママから電話があった。

『幸介、おはよう。もう、出発したの?』
いつもと変わらない、ママの声。

「うん。10時半のフェリーに乗った」

『わかった。じゃあ、夕方には着くわね?』

「多分、5時位には着くと思うよ」

『OK!それじゃ、ママが何か作って置くから、お昼は控えめにしておいてね。
由香も一緒に食べようって言っておいて』

そう言うと、ママは電話を切った。

「ママが、晩ごはん作って待ってるって。由香も一緒にって言ってる」

「そう。絢子ママ、いっつもあたしの心配までしてくれるね。
今日くらい、幸介と二人だけで過ごすって言うかと思ってたのに」

「だって本当に由香の事、娘みたいに思ってるから」

由香は頷いた。

「ねえ、幸介。昨日の事、本当にママには話さないでね」
哀願するように言う。

「もちろんだよ。それに、昨日の事は、由香の責任じゃないよ」

「でも、あたしが変なこと言わなければ、間違いは起こってなかった。それにね、あたしが・・・」

由香の言葉を、僕は遮る。

「間違いなんかじゃないよ!そんな言い方、やめてよ。確かに、偶然が重なって、由香が僕を誘ったような形にはなったけど、僕に気持ちがなければ、昨日の事は起こらなかったんだ」

「違うよ!幸介。部屋が一緒になったのは、あたしのせいなの!絢子ママは、ちゃんと2部屋予約してたの。それを、あたしがツインに変更して貰ったのよ!」

由香が目に涙をいっぱいためて、僕に告白した。

「そんな・・・」

僕は絶句した。




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