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変態ですけど、何か?

第7章 玲子先生

曲が最高潮を迎え、最後の和音を奏で終えた。

あたしは、いつの間にか涙を流し、玲子先生の手を握っていた。

玲子先生はそれを振りほどこうともせず、もう片方の手であたしの手を包み込んだ。

「良かった?」

「とても。あたし、こんなに感情のこもったグリーグ、初めてです。誰の演奏なんですか?あたしもCD買います」

「ありがとう。これ、私なのよ。卒業演奏会で弾いたの」

「玲子先生が?すごいです!」

あたしは、握りしめた玲子先生の手を見る。

そんなに大きくもない手。

この手で、あんなに素敵な音楽を紡ぎだしたんだ。

「ありがとう。私の手、小さいでしょ?だから、苦労したのよ。指の間を切る手術を考えたくらい」

玲子先生も、苦労を思い出したのか、涙声になっていた。

「立花先生」

あたしは、手を握ったまま、玲子先生の肩に頭を預けた。

玲子先生があたしの髪に頬擦りをしてくれる。

すごく幸せ!

「先生と、キスしたい・・・」

心の中で言ったつもりだったのに、
言葉が溢れてしまったみたい。

「いいよ」

そう言った玲子先生の顔を、あたしは驚いて見つめた。

「いいよ」

玲子先生はもう一度言って、あたしに顔を近づけてくる。

数え切れない程の、セックスを経験してきたというのに、
あたしはバージンのように、目を閉じていた。




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