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変態ですけど、何か?

第8章 暴走

「しかしお嬢さん、ワシは金は持っとらんよ。
しがない年金暮らしの年寄りじゃからなあ」

そう言って、ポケットをごそごそする。
硬貨のじゃらじゃらという音をさせて取り出したのは、くしゃくしゃの千円札1枚と数百円の小銭。

「これが全財産じゃ」

渡辺はおじいさんの手のひらから、500円玉を一枚取って、

「じいさん、これでいいよ」

という。

「この女の価値なんて、こんなもんさ」

あたしの中の、わずかに残ったプライドみたいな感情が、めちゃめちゃに打ち砕かれる。
ただでやるよりも、もっと惨めな気分。

でも、それがあたしの官能を、さらに高めた。

『ワンコインの女』

そんな言葉が、脳裏をよぎる。

「そうかい、それじゃワシも気が楽じゃなあ、早速お願いしようかの」

おじいさんが、急に元気を取り戻して、勢いよく立ち上がった。




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