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変態ですけど、何か?

第9章 診療過誤 ~秋野玲子とのこと~

9時前にパパが帰ってきた。


「パパのお帰りだぞ~!」

いつも通り、テンションの高いパパ。

普段なら抱きついて、お帰りのキスをするんだけど、今日はそんな気分になれない。

それでも、何とか取り繕って、

「今日は晩ごはん作っておいたよ!一緒に食べよ」

と、明るく言う。

パパはそんなあたしの気持ちをすぐに察知して、尋ねる。

「里帆?何かあったのか?」


「何でもないの。今日は、ちょっと生理痛が酷くて!
疲れて帰ってきたのに、ごめんね」
あたしは、答えた。

男には想像のつかない『生理痛』という言葉は、話したくない時の魔法の言葉だ。

「そうか、俺にはわからないけど、夕御飯食べたら早くお休み。
洗い物は、俺がやっとくから」

パパは、おでこに手を当てながら言った。

「うん。ありがとう」


殆んど会話もなく、夕食を終えたあたしは、自分の部屋に戻った。

玲子。

玲子。

何か連絡してよ!

30分おきに電話を掛けてみても、やはり応答はない。

メールの返信もなかった。


ベッドに横になり、目を閉じて、
玲子との逢瀬の事を思い出しているうちに、あたしは眠り込んだ。



携帯の着信音で、あたしは飛び起きた。

「もしもし、里帆?」

「玲子!大丈夫なの?」

あたしは叫ぶように尋ねた。

「大丈夫よ。ちょっと疲れてるけど、平気。
里帆、ニュースは観たよね?」

「うん。だから、玲子が心配で心配で。
電話、繋がらないし、メールの返信もないし」
あたしは泣きそうになっていた。

「ごめんね、里帆。ただ、明日の待ち合わせなんだけど、場所を変えてもいいかな?」

「いいよ!玲子と・・逢えるなら・・・どこでも・・・行くよ」
あたしは涙でとぎれとぎれになりながら、言った。

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