誓いのガーランド
第15章 花畑の来訪者 3
「ん?」
楓は不規則にペンを動かしながら、花実の方を一瞥した。
「大雨って、英語で rain cats and dogs っていうんだって」
「へぇ、猫と犬」
「なんでだろうね」
楓が線を描く音と雨の音がいっそう重なっていく。音楽のようにリズムがあるわけではないのに、心地よい。
花実は不意に、いつも足に擦り寄ってくるあの子を思い出していた。あの、ふわふわの毛はどこで雨宿りしているんだろうか。
「神社のあの子は元気かな。雨が降ると心配だ」
楓が、ペンを止める。
ぼんやりとする花実が窓の外の空を見上げているだけの光景。
楓は花実の方に向き直って、言った。
「その言葉、作った人さ。大雨の日を猫と犬って表現すれば、花実みたいな、雨の日に飼い主がいない猫を思ってくれる人が、増えるかもって、思ったんじゃないかな」
「へへ、猫目線なのか。いいねそれ」
花実は、雨から楓に視線を移して、少し照れたように笑う。