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誓いのガーランド

第16章 花畑の来訪者 4

全身の力が抜けて玄関先に座り込んだ。
駆け寄ってきた女性は花実の顔色を見る。

「大丈夫ですか? 怪我はない?」

まだドキドキしている心臓を、少し抑える。
荒い息を整えながら、花実はゆっくりと声を振り絞った。

「だ、大丈夫……です」

動揺が抑えきれず、立ち上がることができずにいた。

そこへ、帰ってきた楓が鉢合わせる。
肩で息をしながら座り込む花実、しゃがみこんで花実の様子を心配する女性……。
ただならぬ雰囲気に、楓の心拍数は一気に跳ね上がった。

「花実?! どうした、大丈夫か」

心配そうな楓の顔が、花実を覗き込む。

怖かった……

恐怖でいっぱいだった気持ちが少しだけ和らぐ。
楓の顔を見て、安心した花実は、ポロポロと涙をこぼした。
花実の背中を擦りながら、楓は女性に尋ねる。

「俺はこの家の者です。何があったんですか?」

楓は女性から事の一部始終を聞くと、すぐに家の中に花実を入れた。女性に礼を述べると、女性もアパートの前から立ち去る。
楓は鍵をしっかりかけると、玄関で靴も脱がずに座り込む花実をぎゅっと抱きしめた。

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