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誓いのガーランド

第5章 繋がる輪 4

花実はもう一度、『ガーランド』のあとがきの猫を指でなぞる。

少し落ち着きを取り戻しながら、ドライヤーを手に取った。

スイッチを入れる。
大きな音と共に、温風が髪の毛を揺らす。

この、いちばん好きな作品を、誰かと共有できるかもしれない日が来るなんて……思ってもみなかった。
もしかしたら、後悔する結果になるかもしれない。
少なからず、そんな不安もあった。
でも、彼女の心を大きく占めるのは、期待だった。

すっかり冷たくなってしまった髪の毛は、ドライヤーに時間がかかった。

決心するには充分な時間だった。


明日、お昼ご飯に彼を誘おう。


花実は、色んな気持ちがごちゃまぜになりながら、鏡の前でいつもより念入りに、化粧水をすりこんだ。

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