テキストサイズ

誓いのガーランド

第7章 繋がる輪 6

花実が降りていったあと、電車はゆっくりと動き出す。

楓は、たった今まで起きていたことが現実だったのか、疑いたくなる気持ちが強かった。

猫の毛を付けて出社してくるくらいだ。
きっと猫が好きなんだろう。

そんなことを思って、楓が付箋に描いた猫が、思わぬ結果を呼んだ。

彼女の口から『ガーランド』が飛び出た時には、まさに薮から棒だった。
こんなに近くに、それも密かに想いを寄せていた相手から。
にわかに信じられなかった。

ほろ酔いの気分で、花実の表情を思い出していた。
『ガーランド』の話をする時の彼女は、いつも以上に生き生きとした表情をしていた。

楓は、不意に可愛かったなと思った自分に対して、もう自制をすることはなかった。


「言ってしまえばよかったかな……」


楓の中で渦巻くもどかしさは、2つある。
ひとつは花実への想い、もうひとつは……。



しかし、何となく今日できた関係を、自ら崩すような気がして、少し怖かった。

このもどかしさは、もう少し胸の中に。

楓はもう一度、花実の笑顔を思い出して、それだけで満たされている自分に気づいた。
今日はよく眠れそうだ。

彼は深く息を吐いて、電車の揺れに身を任せた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ