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誓いのガーランド

第13章 花畑の来訪者 1

その疲れた表情を見て、花実は決心した。

こんな痛々しい姿を、年に数回も見せられるのでは、たまったもんじゃない。

次に起きたら、一緒に暮らそうと告げること。
あとは、彼が嫌がるかもしれないが……そろそろ会社の方は退職も視野に入れるべきだと伝えること。

連載を持って、これから単行本の出版の話も出ている。しばらくは作家の仕事が途絶えないことがわかっているのだから、収入的にも大丈夫なはずだ。

花実自身も、フルタイムで働いている。
彼が書けなくなっても、2人分の生活くらいは贅沢しなければもつだろう。
それに彼が今の会社にまた復帰することになっても、煙たがられることはないと踏んでいる。
なんせ彼は『角を立てない角村』。営業部の影のエースでもあるんだから。

花実は彼を起こすまでの1時間の間、考えながら、黙々と掃除する手を止めなかった。

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