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ユリの花咲く

第4章 夜勤

ゴールデンウィークが近付くと、
昼間の利用者さんは減少するのだが、
お泊まりが増える傾向にある。

比較的軽度の認知症の利用者さんは、家族と一緒に過ごしたり、旅行に出掛けたりして、デイサービスを休む事が多い。

反対に、認知症のひどい利用者さんは、逆に2泊、3泊と連泊することが多くなる。
遠方から親戚がやってきたり、帰省したりするときに、いない方が都合がよくなる、
キツい言い方をすれば足手まといになるのである。

久しぶりに孫や子供と楽しい時間を過ごすのに、手間の掛かる認知症老人は、出来るならばいない方が気兼ねがない。

悲しい話だが、それが現実でもある。


瑞祥苑では、それが特に顕著で、最大定員の5人お泊まりの日が続く。


宮沢施設長は、私に利用者の予定表を見せながら、ため息をついた。

予定表では、4月28日から5月6日まで、9日間に渡って、お泊まり5人の日が続いていた。

「それでね、有紀ちゃん。この間、昼間のスタッフを減らして、夜勤を2人にしようと思うんだ。ちょっと手の掛かる利用者さんも、お泊まりの希望が出ているし・・・。
だから、黒木さんを夜勤に回して、他のスタッフが一緒に入るのはどうかなあ?」

「そうですねえ。彼にもそろそろ夜勤を覚えてほしいし・・・。」

「でしょ?ちょっとそれで、スタッフの希望を調整してみてくれないかな?もちろん、私もその間は、シフトに組み込んでくれていいわ。ケアプランセンターも休みの所が多いから、営業に出ても仕方がないし」

「わかりました。一度、みんなの希望を聞いて見ます」

私は、引き受けた。


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