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王子様の憂鬱

第1章 昔のお話

 次の日から私の足元が彼の定位置になった。暗くて読みにくくないのかと思ったけれど、落ち着くらしい。誰にも見つからず、見られず、自分の世界に入れると。完璧な人にもその人なりの苦労がやっぱりあるのだと思った。

 図書室以外で会っても、彼は私に見向きもしなかった。もしかしたら顔を認識されていないのかもしれない、そう思った。私たちの間に何か会話があるわけでもないし、ただ私の足元のスペースを貸しているだけだ。彼はやはりいつも取り巻きに囲まれていて、その笑顔はキラキラと輝いていた。

「やぁ」
「こんにちは」

 私の足元に入って来る時の彼の笑顔もキラキラと輝いていた。よく分からない人だ。詮索する気もないけれど。

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