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王子様の憂鬱

第1章 昔のお話

 初めて話しかけられたのはうちの近くのコンビニに休みの日に行った時だった。彼は私の顔を認識していたようで、私を見て少し驚いた顔をしてすぐに微笑んだ。

「やぁ」
「こんにちは」
「結城さん、この近くに住んでるの?」
「はい」

 名前も知られていた。どこで知られたんだ。そう思ったけれど、学年は違えど同じ高校なんだから名前を知る方法などいくらでもあるだろう。

「アイス奢ってあげるよ」
「え、何でですか」
「いつも匿ってくれるお礼」
「……はあ」

 少女漫画のヒーローみたいなウィンクを飛ばされて、それを全力で避けた。アイスはありがたく奢っていただいた。
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