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優しく咲く春 〜先生とわたし〜

第5章 入院

「新しい家の話だ」

澤北先生が最初に切り出す。
その言葉を聞いて、わたしも背筋を伸ばした。
どこへ行くことになるんだろう……不安と期待が半分ずつ入り交じる。

「まず、住所だが」

澤北先生が新しい家の住所を読み上げた。
淡々と住所を読み上げる声が、病室に響く。

「……メゾンボナール305号室」

え?そういう発表の仕方?
わたしは戸惑いを隠せずにいた。

今の、メモしといた方が良かったかな……と聞き終えてから思い、

「あ、あの……メモ取るのでもう1回……」

と言うと、井田先生が吹き出した。

「大丈夫。あとでもう1回教えるね」

わたしは小さな声で、礼を言う。
どうやら、どこかのアパートのようだ。

自分には思い当たる身寄りもいないから、どこかの施設で暮らすようになるんだろうと、勝手に考えていた。しかし、どうやらそうでは無さそうだ。

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