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優しく咲く春 〜先生とわたし〜

第5章 入院

告げられた住所は、学校からそう遠くない。
むしろ、前の家より学校に近い住所だった。ってことは、学校を変えずに生活できるってこと?

それだったら、すごく嬉しい。
学費のためとはいえ、自分で選んで勝ち取った進学だった。そのまま、通い続けたかった。
今のクラスだって良いし、井田先生との畑の約束だって、まだ全然手をつけられていない。

「……転校しなくていいってことですか?」

「もちろんだよ」

井田先生はにこやかに答える。それが確定したことがもう充分にうれしかった。

「それでな、一緒に暮らす人間なのだが……」

わたしの嬉しそうな様子を見ながら、改めて澤北先生が続けた。
一緒に暮らす人間……その言い回しにかなり言葉に迷ったことがわかった。
少し言いにくそうにしているのが気がかりで、わたしは首を傾げる。

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