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優しく咲く春 〜先生とわたし〜

第6章 メゾンボナール305号室

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「ここが新しい家。メゾンボナール305号室ね」

案内は、井田先生がしてくれた。
3階建てのマンションの3階。3人で部屋の前まで来る。
扉を開けた井田先生の後に続いて、わたしは玄関に足を踏み入れた。

「お邪魔します……」

恐る恐る、声を発すると、後ろから澤北先生の声が飛んでくる。

「何言ってんだ、ただいまでいいんだよ。今日からここが帰る場所なんだから」

言いながら、わたしの頭を撫でた。
澤北先生、歓迎してくれている。
わたしの『帰る場所』。そのフレーズが心の底からうれしくて、顔がほころぶ。撫でられながら、澤北先生の方を振り向いた。

「た、ただいま」

ぎこちなく、久しぶりに……いや、初めて口にする言葉に、心がくすぐったくなった。

「うん、おかえり」

井田先生も、にっこりと笑って、部屋の案内を続けてくれた。

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