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優しく咲く春 〜先生とわたし〜

第6章 メゾンボナール305号室

「……広い」

共有スペースは、オープンキッチンになっていて、ダイニングテーブルの向こう側には、リビングが広がっていた。ローテーブルと、ソファとテレビ、観葉植物が置かれている。
物が少なく、すっきりしていて、とても広く感じた。ベランダからの日当りがとても良く、日光が部屋の中を明るくしている。
観葉植物は、きっと井田先生の趣味だろう。



「まずは合鍵。これは1人1本持ってるから、咲にも預けるね。落としたり無くしたりしないこと」

「はい」

手渡された合鍵を、緊張気味に握って手を開く。
鍵には白黒のハチワレ猫の、小さなチャームがついていた。すぐに気に入って、無くさないことを心の中で誓う。

「かわいい……」

思わずつぶやいて、頬が緩む。井田先生は微笑みながら言った。

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