優しく咲く春 〜先生とわたし〜
第8章 本当の話をしよう
「ねぇ、春ちゃん。春ちゃんは……なんでお医者さん、辞めたの?」
よりにもよって、この場所で……。
俺は、咲から目を逸らした。
「……知りたい?」
「うん」
俺は俯いて、つま先を見つめてから、咲に向き直った。
咲の奥で、優が心配そうにこちらを見ている。
『無理すんな』
口の形だけで、そう言った。大丈夫。無理なんかしていない。
「少し、暗くなっちゃうよ?」
おどけたように言ってみたけれど、咲の真っ直ぐな視線は変わらなかった。
俺は、思い出しながら、ゆっくりと話した。