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優しく咲く春 〜先生とわたし〜

第8章 本当の話をしよう

「春斗、酔っても絶対、咲に手出すなよ?」

予防線を張るために言うと、意外なまでに正気な応えが返ってきた。

「ばか、出すわけない。犯罪だ。その前に咲は娘だよ。……俺らがやってる事って、子育てなわけだし。まだ中学生。甘えるのも足りてないから、愛着形成に至ってはまだまだ幼児よ……」

祭りできらきらと目を輝かせて、はしゃいでいた姿を思い出す。
瞼の裏に、鮮明にその様子が浮かんでは、楽しそうな顔が頭から離れない。
目に映るもの全てが新鮮な様子だった咲は、小さな子どものようだった。手を繋いでいないと、人混みに流されてしまいそうなくらい。

その想像を打ち消すように、春斗が言った。


……楽しいことばかりではいられない、現実を見せてくる。

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