テキストサイズ

優しく咲く春 〜先生とわたし〜

第9章 アメとムチと無知

優は通知表を見終わると、それを閉じて、テーブルの上に置いた。
わたしの目を覗き込む。何か、大事なことを話す前のような気がして、わたしの背筋も伸びた。
ひとつ、間を置いて、優が言葉を発する。

「咲。……夏休み、どこか行くか?」

「……! どこに行くの?!」

思ったより心が浮き立つような話に、目を見開いた。
夏休みにどこかに行く。そんなビッグイベントは、生きていて今まで1度もなかったから、素直にうれしい。

「どこがいい? 春斗、なんか候補あるか?」

きらきらする目で春ちゃんを見た。
春ちゃんは考えながらどんどんと候補を挙げていく。

「んー、そうだなぁ。遊園地、水族館、海、山……」

海……! わたしの思考はそこで止まる。


ストーリーメニュー

TOPTOPへ