優しく咲く春 〜先生とわたし〜
第9章 アメとムチと無知
コーヒーを啜りながら目を閉じる。
ほっと、一息付きながら、お互いが咲のことを考えていたと思う。生活の中心になった咲。
これからのこと。
「……海、どこにしような」
思い出したように、優が言った。
『海行きたい……』
ボロボロ泣きながら言っていた咲を思い出して、苦笑した。
「……ちゃんとご褒美あげないとね。車で行くでしょ? 交代で運転なら、行ったことあるところがいいかな」
運転は苦手だ。久しく運転していない。
「あぁ。……1泊するか、近くに宿とって」
「いいね、夏休みっぽい」
2人でスケジュールを詰めて、8月上旬、お盆の前に日程を決めた。旅館を探して、予約をとる。
咲の嬉しそうな顔を想像すると、どちらからともなく笑みがこぼれて、なんとなく2人で笑いあった。